「朝起きると顎が疲れている」「歯がしみる」「詰め物がよく外れる」――。このような症状の背景には、歯ぎしりや食いしばりが関係していることがあります。
歯ぎしりというと、睡眠中にギリギリと音を立てる状態を想像するかもしれません。しかし、実際には音が出ないまま強く噛みしめるタイプもあり、ご本人やご家族が気づいていないことも少なくありません。
歯ぎしり・食いしばりによる力が繰り返し加わると、歯のすり減りや亀裂、詰め物・被せ物の破損、顎の痛みなどにつながる可能性があります。
この記事では、歯ぎしり・食いしばりの症状や原因、歯科医院で行う検査、マウスピース(ナイトガード)治療について解説します。

歯ぎしり・食いしばりとは?
歯ぎしりや食いしばりは、歯科では「ブラキシズム」と呼ばれることがあります。大きく分けると、睡眠中に起こるものと、起きている時間に起こるものがあります。
睡眠中の歯ぎしり・食いしばり
寝ている間に、歯をこすり合わせたり強く噛みしめたりする状態です。
睡眠中は自分で力を調節できないため、本人が気づかないまま歯や顎へ負担がかかることがあります。ご家族から音を指摘されたり、歯科検診で歯のすり減りを指摘されたりして初めて気づく方もいます。
起きている時間の食いしばり
仕事、家事、運転、スマートフォンの操作などに集中している時に、無意識に上下の歯を接触させたり、強く噛みしめたりする状態です。
音が出ないため発見しにくく、「気づくと奥歯に力が入っている」という方もいます。
歯ぎしり・食いしばりのセルフチェック
次の項目に当てはまる場合は、歯ぎしりや食いしばりによる負担が生じている可能性があります。
- 朝起きると顎が疲れている、だるい
- 家族から寝ている時の歯ぎしりを指摘された
- 歯の先端や噛む面が平らにすり減っている
- 歯に細かな亀裂や欠けがある
- 詰め物や被せ物が繰り返し外れる、壊れる
- 虫歯がないのに歯がしみる
- 噛むと特定の歯が痛い
- 口を開けると顎が痛い、音が鳴る
- 頬の内側に白い線や噛み跡がある
- 舌の縁に歯型のような凹凸がある
- 日中、気づくと上下の歯を接触させている
ただし、これらの症状は歯ぎしり以外の原因でも起こります。自己判断だけで決めつけず、歯や顎の状態を歯科医院で確認することが大切です。
歯ぎしり・食いしばりを放置するとどうなる?
歯がすり減る・欠ける
歯と歯が繰り返し強く接触すると、噛む面や先端が徐々にすり減ることがあります。負担が集中した部分に亀裂が入り、歯が欠けたり割れたりすることもあります。
特に、大きな詰め物が入っている歯や神経を取った歯は、残っている歯の量や状態によって破折しやすくなる場合があります。
詰め物・被せ物が外れる、壊れる
強い力が繰り返しかかることで、詰め物や被せ物が欠けたり、接着部分が弱くなって外れたりすることがあります。
詰め物や被せ物が頻繁に壊れる場合は、修復物だけでなく、噛み合わせや歯ぎしりの有無も確認する必要があります。
知覚過敏が起こる
歯のすり減りや歯ぐきの後退などによって象牙質が露出すると、冷たいものや歯ブラシの刺激で歯がしみることがあります。
虫歯と知覚過敏では必要な治療が異なるため、症状が続く場合は検査を受けましょう。
顎関節や筋肉へ負担がかかる
食いしばりが続くと、顎を動かす筋肉や顎関節に負担がかかり、朝の顎のだるさ、口を開けた時の痛み、開けにくさなどが現れることがあります。
顎の症状にはさまざまな原因があるため、歯ぎしりだけが原因とは限りません。症状や顎の動きを確認したうえで対応を検討します。
歯周組織へ負担がかかる
歯周病がある歯に強い噛む力が加わると、歯を支える組織への負担が大きくなることがあります。
歯ぐきからの出血や歯の揺れがある場合は、噛み合わせだけでなく、歯周病の検査も必要です。
歯ぎしり・食いしばりの原因
歯ぎしりや食いしばりは、ひとつの原因だけで起こるとは限りません。
睡眠の状態、ストレス、生活習慣、集中時の癖、服用している薬、飲酒や喫煙など、複数の要素が関係することがあります。
「噛み合わせを治せば、必ず歯ぎしりが止まる」という単純なものではありません。そのため、歯を大きく削って噛み合わせを変更するのではなく、まずは現在の歯や顎の状態を確認し、負担を抑える方法を検討します。
歯科医院では何を調べる?
歯科医院では、問診とお口の中の検査を組み合わせて、歯ぎしりや食いしばりによる負担を確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
- 歯のすり減り方
- 歯の亀裂や欠けの有無
- 詰め物・被せ物の状態
- 噛み合わせと歯が接触する位置
- 歯の揺れや歯周組織の状態
- 顎関節の動きや痛み
- 顎を動かす筋肉の緊張
- 頬や舌に残っている歯の跡
- 起床時や日中の自覚症状
- ご家族から歯ぎしりを指摘されたことがあるか
歯のすり減りだけで現在の歯ぎしりを断定できるとは限りません。過去に生じたすり減りが残っている場合もあるため、複数の所見を確認して総合的に判断します。

マウスピース(ナイトガード)治療とは?
歯ぎしりや食いしばりによる負担から歯や顎を守るために使用するのが、マウスピース(ナイトガード)です。
患者さまの歯型をもとに製作し、主に睡眠中に装着します。上下の歯が直接強く接触することを防ぎ、歯や修復物に加わる力を分散させます。
ナイトガードには、次のような効果が期待できます。
- 歯のすり減りや欠けを防ぐ
- 歯の亀裂や破折のリスクを抑える
- 詰め物や被せ物を保護する
- インプラントやセラミックへの負担を抑える
- 顎関節や顎の筋肉にかかる負担を和らげる
ただし、ナイトガードは歯ぎしりそのものを必ず止める装置ではありません。また、歯並びを動かしたり、骨格的な噛み合わせを治したりする矯正装置でもありません。
歯ぎしりが起こった時に、歯や修復物が受けるダメージを少なくするための保護装置と考えると分かりやすいでしょう。

歯科医院で作るナイトガードと市販品の違い
ドラッグストアやインターネットでは、自分で形を調整するマウスピースも販売されています。
歯科医院で作るナイトガードは、患者さまの歯型を採り、歯並びや噛み合わせに合わせて製作します。装着時には、歯への適合や噛み合わせを確認し、必要に応じて細かな調整を行います。
一方、市販品は歯並びや噛み合わせに合わないことがあり、強い違和感が出たり、特定の歯や顎に負担が集中したりする可能性があります。
市販品を使用して痛みや噛み合わせの違和感が出た場合は、無理に使い続けず、歯科医院へご相談ください。
ナイトガード製作の流れ
1.診査・カウンセリング
歯のすり減りや亀裂、詰め物・被せ物、顎の動き、噛み合わせなどを確認します。起床時の症状や、ご家族から歯ぎしりを指摘されたことがあるかなども伺います。
2.歯型の採取
ナイトガードが適していると判断した場合は、患者さまの歯型を採ります。採取した歯型をもとに、専用のナイトガードを製作します。
3.装着と噛み合わせの調整
完成したナイトガードを装着し、歯への適合や噛み合わせを確認します。特定の歯だけに強く当たらないよう、必要に応じて調整します。
装着方法やお手入れ方法についてもご説明します。
4.使用後の確認・再調整
一定期間使用した後、違和感の有無、噛み合わせ、装置のすり減り方などを確認します。
使用している間にナイトガードが変形した、穴が開いた、割れた、装着時に痛みが出るといった場合は、無理に使い続けずにご相談ください。
ナイトガードのお手入れと注意点
- 使用後は水で洗い、清潔な状態に保つ
- 歯科医院で案内された方法で洗浄する
- 熱による変形を防ぐため、熱湯を使用しない
- 紛失や破損を防ぐため、専用ケースで保管する
- ペットや小さなお子さまの手が届かない場所に置く
- 定期検診へ持参し、変形やすり減りを確認してもらう
歯みがきをせずに装着すると、歯とナイトガードの間に汚れが残ります。就寝前に歯を磨き、清潔な状態で装着しましょう。
日中の食いしばりを減らすためにできること
起きている時間の食いしばりは、ご自身で気づくことが対策の第一歩になります。
- 上下の歯が接触していないか定期的に確認する
- 力が入っていたら、唇を閉じたまま上下の歯を離す
- 肩や顎の力を抜いて深呼吸する
- パソコンやスマートフォンの見やすい場所に注意書きを貼る
- 長時間同じ姿勢を続けず、休憩を取る
- 頬杖やうつ伏せ寝など、顎へ負担がかかる習慣を見直す
日中の食いしばりは、意識して力を抜く習慣をつくることで、歯や顎への負担を減らせる可能性があります。
早めに受診したい症状
次のような症状がある場合は、歯ぎしりだけでなく、歯の破折や虫歯、歯の神経の炎症、顎関節の問題なども考えられます。早めに歯科医院へご相談ください。
- 歯が欠けた、割れた
- 詰め物や被せ物が取れた
- 何もしなくても歯が痛む
- 噛むと強く痛む
- 急に口が開けにくくなった
- 顎の痛みが強い
- 歯ぐきや顔が腫れている
- 歯がグラグラしている
よくある質問
マウスピースを使えば歯ぎしりは治りますか?
ナイトガードは、歯ぎしりを必ず止める装置ではありません。歯ぎしりや食いしばりが起きた時に、歯や詰め物・被せ物へ加わる負担を抑えることが主な目的です。
ナイトガードは毎晩使う必要がありますか?
使用頻度は症状やお口の状態によって異なります。自己判断で使用を中止せず、歯科医師から案内された方法で使用してください。
ナイトガードに違和感がある時はどうすればよいですか?
使い始めは装着感が気になることがあります。ただし、強い痛み、吐き気、顎の痛み、噛み合わせの違和感などが続く場合は、無理に使わず歯科医院へご相談ください。調整によって改善できる場合があります。
ナイトガードはどのくらい使用できますか?
使用できる期間は、歯ぎしりの強さ、装置の材質、お手入れ方法、お口の変化などによって異なります。
穴が開いた、割れた、変形した、緩くなった、装着時に痛みが出るといった場合は、調整や再製作が必要になることがあります。
マウスピース治療は保険適用になりますか?
症状や診断、製作する装置によって、保険診療の対象となる場合があります。お口の状態を確認したうえで、治療内容と費用をご説明します。
まとめ
歯ぎしりや食いしばりは、睡眠中や集中している時に無意識に起こることがあり、ご自身では気づきにくい習慣です。
放置すると、歯のすり減りや亀裂、知覚過敏、詰め物・被せ物の破損、顎の痛みなどにつながる可能性があります。
歯科医院で製作するナイトガードは、歯ぎしりそのものを必ず止める装置ではありませんが、歯や顎、詰め物・被せ物へ加わる負担を抑えるために役立ちます。
曽我歯科医院三軒茶屋では、歯のすり減り方や亀裂、噛み合わせ、顎の動きなどを確認し、患者さまのお口に合わせたナイトガードをご提案しています。
三軒茶屋・上馬・野沢周辺で、「朝起きると顎が疲れている」「歯ぎしりを指摘された」「歯が欠けやすい」「詰め物がよく外れる」といった症状がある方は、お気軽にご相談ください。
曽我歯科医院三軒茶屋